PDFアクセシビリティ完全ガイド:誰もが読みやすい文書を作る

PDFアクセシビリティバリアフリースクリーンリーダー

PDFのアクセシビリティは、すべての人が情報にアクセスできるようにするために重要です。本記事では、アクセシブルなPDFの作成方法と確認方法を詳しく解説します。

アクセシブルPDFとは

アクセシブルPDFは、障害の有無に関わらず、誰もが利用できるように設計されたPDF文書です。

主な特徴

  1. スクリーンリーダー対応

    • テキストの読み上げ順序が正しい
    • 画像に代替テキストがある
    • 見出しが適切に構造化されている
  2. キーボード操作対応

    • マウスなしで操作可能
    • タブ順序が論理的
    • フォーカスが見やすい
  3. 視覚的配慮

    • 十分なコントラスト比
    • 拡大しても読みやすい
    • 色だけに依存しない情報伝達

タグ付きPDFの作成

タグ付きPDFは、文書の構造を機械的に理解できるようにしたPDFです。

Microsoft Wordから作成

1. 文書作成時のポイント
   - スタイル機能で見出しを設定
   - 画像に代替テキストを追加
   - 表に見出し行を設定

2. PDFエクスポート設定
   - 「ファイル」→「エクスポート」→「PDF/XPSの作成」
   - 「オプション」で「アクセシビリティ用のドキュメント構造タグ」をチェック
   - 「PDF/A準拠」も選択推奨

Adobe Acrobatでのタグ付け

既存のPDFにタグを追加する方法:

  1. 自動タグ付け

    • 「ツール」→「アクセシビリティ」
    • 「文書にタグを追加」を選択
    • 自動認識で基本的なタグが追加される
  2. 手動調整

    • タグパネルで構造を確認
    • 見出しレベルの修正
    • リーディングオーダーの調整

代替テキストの追加

画像やグラフには必ず代替テキストを追加します。

効果的な代替テキストの書き方

良い例:

  • 「売上推移グラフ:2023年は前年比120%増加」
  • 「製品写真:青色のワイヤレスヘッドフォン、折りたたみ可能」

避けるべき例:

  • 「画像」「図1」「グラフ」(内容が不明)
  • 冗長すぎる説明(本文と重複)

色覚異常への配慮

日本人男性の約5%が色覚異常を持っています。

配慮のポイント

  1. 色だけに依存しない

    • 重要な情報は色+形や文字で表現
    • グラフは模様やマーカーも併用
  2. 見分けやすい配色

    • 赤と緑の組み合わせを避ける
    • 青とオレンジは比較的見分けやすい
    • コントラスト比4.5:1以上を確保
  3. 確認ツール

    • Color Oracle(無料の色覚シミュレーター)
    • Adobe Colorのアクセシビリティツール

フォントとレイアウト

読みやすさを重視した設計が重要です。

推奨設定

  • フォントサイズ:本文12pt以上
  • 行間:1.5倍以上
  • フォント種類:ゴシック体やユニバーサルデザインフォント
  • 余白:十分な余白で圧迫感を避ける

フォームのアクセシビリティ

入力可能なPDFフォームも配慮が必要です。

チェックポイント

  1. ラベルの関連付け

    • すべての入力欄に明確なラベル
    • 必須項目の明示
  2. タブ順序

    • 論理的な入力順序
    • グループ化された項目
  3. エラーメッセージ

    • 具体的で分かりやすい内容
    • 修正方法の提示

アクセシビリティチェック

作成したPDFが基準を満たしているか確認します。

Adobe Acrobatでのチェック

1. 「ツール」→「アクセシビリティ」
2. 「完全チェック」を選択
3. 確認する基準を選択(WCAG 2.1など)
4. レポートを確認して問題を修正

無料ツール

  • PAC 3:PDF/UA準拠をチェック
  • NVDA:無料のスクリーンリーダーで実際に確認
  • axe DevTools:ブラウザで表示時のチェック

法的要件と規格

多くの国でWebアクセシビリティが法的に求められています。

主な規格

  • WCAG 2.1:Web Content Accessibility Guidelines
  • PDF/UA:PDFのアクセシビリティ国際規格
  • JIS X 8341:日本のアクセシビリティ規格

トラブルシューティング

よくある問題と解決法

  1. スクリーンリーダーが読み上げない

    • OCR処理が必要な場合がある
    • テキストレイヤーの確認
  2. タブ順序がおかしい

    • フォームフィールドの順序を手動調整
    • Acrobatの「タブ順序」パネルで修正
  3. コントラストが不足

    • 背景色や文字色の調整
    • 透明度の設定を確認

まとめ

アクセシブルなPDFは、情報のバリアフリー化に不可欠です。最初は手間がかかるように感じるかもしれませんが、テンプレート化することで効率的に作成できます。すべての人が情報にアクセスできる社会の実現に向けて、アクセシビリティに配慮したPDF作成を心がけましょう。

企業や公的機関では特に、アクセシビリティ対応が社会的責任として求められています。本記事のガイドラインを参考に、誰もが利用しやすいPDF文書の作成に取り組んでください。